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短歌工房
紙吹雪
そこもまた一つの故郷 黒揚羽、樹間に消える大菩薩の道
白樺とツツジと高く飛ぶ雲と 甲州市とは塩山、勝沼
行き暮れて見上げる空の太陽の白く翳りて墜ちる幻
春紫苑咲いて陽あたる道端に信号待ちをしている犬よ
なんとなく疲れきったという顔の老犬がいて黄金週間

鈴蘭の白、空白の時間あり 「鈴蘭の日」という五月一日
夏草の茂る廃屋 太陽が今薔薇色に染めてゆく海
雪が降り不協和音が奏でられ舞台にはまた時間が巡る
何かしら嘘の気配が濃厚で 夏の雲湧く螺旋階段
つくづくと薄情者で非人間 それが私と雨を見ている

はつなつのひかり放って今日の川 小鷺も鴨も消えた用水
具体性なき歌を書く私の具体性なき日常である
夢があり夢の色した街があり薔薇色の海を見ていた昨日があった
いかがわしい明日であればみんな纏めて引っ括られる覚悟はよいか
出獄の許可あり出獄する人あり 「共謀罪」論議なくして成立の運び

白樫の間に黄薔薇、蜆蝶 こわれた船の部品の木椅子
残されて一人の川を越えゆけば都大路の桜かがやく
母の手が取ったであろう黒電話 二十年前その部屋にいて
常夜灯一つ残して幕は下り舞台の上の光りも消える
金色の鳥籠に似た天蓋の線と鎖と光りの渦と

半眼の河馬の一日 終日を水に浸かって何を想って
手紙を書く 手紙嫌いの私が 今タンポポの綿毛が飛んだ
愕然としている 何もかもなんと迂闊に過ぎたことだろう
『炎を孕む』蔵本さんの歌集が来た 白い孔雀が炎となって
花終わる季節であれば花疲れ 四月最後の木曜の午後

蟹味噌と洗濯物もお土産に新入社員研修終わる
歌いたくなくなったのなら歌をやめればいい牛蛙来て牛蛙啼く
ヤマボウシ、ミズキいずれか上水に 胡蝶のように 落下流水
遅れ咲く紫木蓮にも陽があたり 遠い記憶の中の歌声
誰かが語り始めると夜が明けるという 聞き逃しているかもしれない私  

まだ少し眠り足りない猫柳 橡の若葉が生まれる朝
寒暖の二つの季節摩擦する 空がこんなに悲鳴を上げる
落ち込んでいます地蜂の溺死体 水溜りには今日も青空
中村屋! まだ暮れ残る春の空 舞台には猶舞う紙吹雪
明らかにここ過ぎてゆく落ちてゆく卯月の雁を眺めておりぬ
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禽獣
ヤコブ病、認知症との境界の曖昧にして不明の構図
人間を殺してしまうためにある 全世界的儲けの機構
古山の楮、三椏、漆の木 千年和紙の里に星降る
まだ何も変わっていない地球にはシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星近づく
権力が仕掛けた罠と生贄と 堀江貴文まだ塀の中

移動性高気圧が呼ぶ花や鳥 人の動きも忙しくなる
水色の空に光りの泉あり 空の楽譜を奏でていたり
透明な天使クリオネ別の名をハダカカメガイ肉食の貝
残された時間もなくて成し遂げたい夢もないから日常である
生きてゆく手立て一つも持たないで この世に生を受けて飛び立つ

純粋といえば純粋プリシラは 極楽鳥のように純粋
一日の終わりは早い 散り急ぐ花であったと時間を思う
何事もなくて幸福 それぞれの虚しささえも幸福の徴
火山性微動、空には地震雲 そのようなことになりませんように
じわじわと感染してゆく牛がいて ホモ・サピエンス春の朦朧

本日は休日なりの看板を掲げて花のかたえに休む
何一つ変わっていないつまらなさ敵と味方を取り違えても
天空に大いなる虹または塩 葉っぱに乗った水滴の虹
天上の銀の塩降る砂時計 蛞蝓を消すゲームだという
曇り日の空の下には上水の花を集めてゆく花筏

この辛夷今年は花を咲かせない 去年伐られた兄妹の樹よ
橡の木の目覚めはとても明瞭な目覚めであるから天を突く芯
動物は多分死にたいと言わない そのせいだろう綺麗な瞳
どこまでも遠くゆらいでゆく火影 失ってゆく時間の記憶
密林の奥に潜んでいた虎が火に追われている カンボジアの赤い土 もちろんこれは映画の話

孤児になった迷子の虎がいて まだ乳をのむベンガル虎で
今危機を脱出したというように逃がしてやりたい森の奥へと
幸福の記憶鮮やかに甦る 青空の下咲く花水木
眠り病かもしれないと思います 身体の中に眠る春です
生きていることも生きていないことももしかしたら同じ月の裏表

忘れたいことや忘れるべきことに足をとられて躓いている
前世を占う人の多くして末世があらば末世であろう
胸騒ぎする夜があり朝がある 禽獣を抱く森に風立つ
花びらが吹き寄せられる汽水域 海と川とが相会うところ
胸騒ぎする夜があり朝がある 禽獣を抱く森に風立つ
精霊
ジャングルに残っているのはナマケモノ 水没ジャングル泳いで渡る
立ったまま眠る大木 森の木々 水没ジャングルアロワナの森
好きなのは水没ジャングル いえ水が何より好きなだけかもしれない
大陸がそこにあるからこの空に黄砂が舞って春の日本
現実と少し違って繊細な虚数微妙に配合されて

木々の間に光を追ってゆくように 声追うばかり鶯はどこ 
深夜にポール・マッカートニーLiveを視る ブラームス2番に続く放送
華麗なる春がゆくとき一斉に芽吹きはじめる夏の草木
繊毛は何を探してそよぐのかミカドウミウシ裸鰓目
寄りかかるところ失くしてヤドカリのヤドカリとして終える一生

学校の兎は死んだらしいという 兎のいない校庭の小屋
いつのまにか飼われていたよ その兎 誰にも望まれないのにいつか
落ち着かず眠れない日がありまして不安のようなものがよぎって
木の枝に木の枝が触れて告げるでしょう 季節が変わる四月の朝
十重二十\重取り囲まれて藪の中 現実というしがらみの中

実存を鷲づかみする方法を知っているって言ってましたが
爛漫の春の光の青空に 紙飛行機の一つが消える
誰も最後は知らなくてただひとときの夢の波照間
花散らす雨が降るから湖に小舟もなくて春のみずうみ
いつまでの桜吹雪か生きて逢うこれが最後と四月の吹雪

金色の浄土とも見る大乗寺、開け放つ時、応挙の伽藍
春の日が窓越しに射す館内の小さな白い動物の骨
雨の日に晴れの日に咲く花があり 花をゆらしてすぎる風あり
昨年の秋、叔母が死にわが家の私までの血脈終る
長く長く生きてみるのもよいものと百歳の翁笑みつつ語る

しかしまた泥の中にも咲く蓮があると春の日その曙に
格差あり格差の下のその下の下に溜ってヘドロとなって
世の中は弱肉強食 食されて砕けて消えた命だろうか
埃及の王墓の壁のレリーフに猫の手らしき肉球の跡
あの世から見ているような写真があり生前、死後を渡る精霊

生きるともいえない生活ともいえない鵺のようなる生の実体
わが内の鳥獣戯画を完成し涅槃の釈迦のそばにやすらう
死んでいた あなたの大事なあの人は 墓地には小雨が 映画の話
一週間前まで元気だった人 敬礼をして去るように逝く(追悼・久世光彦)
どくどくと血潮見せれば怯えよう 桜咲く日も散る日も淡く
(桜の樹の下には死体が埋まっているというが)
無病にあらぬ
だらだらと過ごしていれば日は移り花咲き散って日も暮れかかる
白色の鶏走る庭にして 生々流転、死の側に入る
そういえば他には思いようもなく束の間の生、束の間楽しむ
リアリスト牛くんの教え現実を受容すること幸福の掟
ビッグママ、羊が連れられて行ったのは七面鳥が炙られる朝

一言を聞き逃したらその後は百万年後の夜になるはず
賢明な人なら解る偽善でも愚かな私たちには嬉しい
虹色の毛糸玉であるそのわけは鼠の合唱隊のご所望
転がった毛糸玉にも行き先があって運命みたいに
演説が上手なアヒル 「助けてほしいんだよブタくん」

犯罪を企む家鴨の共犯者 お馴染みのベイブの出番
何という悲しい朝が来ているの 遠い水面に落ちてゆく雨
だんまりのような春来て薄闇を動く人影、散るさくら花
小忌衣(おみごろも)得体知れない衣装なれど義経が着れば貴人の衣
地震来てゆれているのを感じながら遠野の雪の画面見ている

花に嵐 さすがに風も吹いてきて夜には雨も降り出すという
鹿の絵の郵便切手10円の切手の中の草炎える春
「ふるさと切手・近畿の花」  枝垂桜の白き憂鬱
九州で地震があった。震度5弱 春の列島ゆらぎはじめる
あの頃は見知らぬ町の見知らぬ川 その川の今ほとりに住んで

南天荘書店ってあの頃ありました 震災後の駅をまだ知りません
六甲の八幡神社のその社殿囲む緑の中の鳩たち
架橋駅、阪急六甲 急行とバスの背中が・・・ 遠くに海も
死に上手 白木蓮の咲く頃のとある日暮れの落花のように
桜咲く 春の心は朧にて衆院懲罰委員会の質疑は続く

感情を剥き出しにして磨かれてその牙高値で売られておりぬ
コヨーテは橋を通ってやってきた 風は深夜に駆け抜けていた
柳田さん吉増さん本当の学者や本当の詩人 瞳を見ればそこにあるもの
言葉にも日溜りがある 日溜りに土筆んぼうが顔を出している
まんさくの花が咲いたよ花言葉は「呪文・霊感」春の先駆け

原爆と等価交換されていた天皇制の存続が今
生死には関わりもなき病にて無病にあらぬ 人の世疲れ
危うくて危うくなくて時は春 やさしい風となる沈丁花
何事もないように来る春があり 蕗の薹出る陽だまりがあり
紫の花大根や菜の花の咲く春が来て春がまた来て