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短歌工房
退屈な木曜日です午後三時 孔雀時計は宮廷で鳴る
退屈な木曜日です午後三時 孔雀時計は宮廷で鳴る
蜃気楼はるかに見えて春の海 海の真青を求めていたり
明らかになればなるほど実体は淋しいばかりの夕暮である
牡蠣舟の残骸のこす財田川 三架橋から見る冬の川
しんとして雪降るような曇り空 薄柔らかな衛星タイタン
北限の猿は追われていたりけり 青森、下北半島脇野沢村の猿
野火止の朝靄のなか泳ぐ鴨 鴨が川面をたたく水音
湧水も小径もすでに消え絶えて蝶の行方もまた靄の中
村人は何処の森の 銀色の茸も普通の茸も消える
銀色の茸のありて愉しめど洞窟すでに彼を生やさず
荒廃はなお魂に及ぶから タイタン画像の水の痕跡
意味もない不安なのかも漣がひたひたと今砂地を洗う
再びは帰らぬ海の丸木舟 月の小舟は雲の間に消ゆ
原人はどこへ行ったか洞窟に描かれているのは唯未知の鳥
石積みの隙間を水と草が被いやがては水と草だけになる
大いなる樹があり樹には魂が春の日向を流れるように
「始まりは鳥が運んだ一粒の種」であったとナレーションに言う
人混みの人をカウントする人の手に集って統計その2
駅前の舗道に置かれたポックスにアンケート用紙が回収される
GODZILLAなお地球のどこか海底の火口湖にその卵を産みつけ
怪獣の足が通って行きました富士五湖でしょうかあの湖は
従兄弟がねゴジラ映画の助監督をしておりました何本かですが
(唯一人のみを除いたどなたでも)さよならゴジラさらば怪獣
TVではカサゴが大きな口を開け藤野真紀子さんの手で捌かれる
何という言葉もなくて明ける年 被災している脳の中枢
ナイアガラの滝が襲ってくるように高波が来る津波の映像
浄瑠璃の三味は太棹 「守・破・離」というは術の真髄
人形といえども人形使いの太夫ほどある身丈心の丈も
人形の手足幾つもぶら下がる古典芸能文楽の楽屋
三色の幕が上がれば登場する世阿弥の語る花継ぐ面
「千里が外も雲晴れて」能の本を書くこと世阿弥命也
高貴なるという幾人か高みにあり群集は振る小さな旗を
宮城に向かう人々掲げ持つ「天皇陛下萬歳」の旗
一万人あまりの人が宮城に向かって歩き日の丸を振る
晴れの日も雨の日もなく薄氷張る一月の水甕の水
冬らしくなってストーブ赤々と大晦日まで後二日です
スペインに大雪スリランカに津波 滾り始める冬の環礁
微笑みの国にも津波襲うという 押し上げられて来る水位線
何十年か前の街のジングルベル 静かになった日本の聖夜
否定する人の多さが変わらない喫水線を越えることなく
空海の命日ゆえに京都では東寺に師走の市が立ちます
何もない多分何も無い毎日 でもその中に私がいる
半島と孤島の間に隠岐の島、西ノ島ありて櫂流れつく
空海の命日ゆえに京都では東寺に師走の市が立ちます
何もない多分何も無い毎日 でもその中に私がいる
川岸に茶色い馬の数頭が水を飲むらし雲湧く村に
野生馬もやがて捕われ牧畜や農耕の具として生きる一生
草原は穏やかに暮れ穏やかに夜の帳にすべてをつつむ
草原を流れる水の一筋が仔馬養い人の子養う
連れ帰る馬の一頭まだ乳を飲みたがってる子馬であれば
野生馬を追う青年の手の長い紐つきの棒 犬獲りを思い出す
草原に白い羊が群れていてそこがモンゴルだろうと思う
「悲しい人生」と誰かが呟いて始まる映画 米国の映画
退屈といえば退屈日曜の午後も見ているwowowの映画
幸福の白い梟 北国の森の泉を囲む樹の洞
絞り込み検索をして犯人を唯一点に追い詰めてゆく
日々何もないのに書く日記何もないから書けるのだろう
ささやかな暮らしはさらにささやかに 定率減税廃止の方向
初めから無かったものは失ったとは言わないわけであって産土の
失った一つの心思うとき遠い地震の二ュースが終る
流星群見ることもなく眠れば朝焼けの空を二つに切りゆくジェット機
震度5強 北海道でまた地震 飛行機雲が空を分けた日
新月で10日後はもうChristmas 2005年の陽もまた昇る
氷雨でもない雨が降り木蓮の蕾が開く不思議な師走
片隅に投げ出されている<私>の命名欄の無限空白
永遠に書かない人か永遠に書けない人か私の場合
暖かい日々が続いて幸福な日々も続いて忘れてしまう
どんな奇病かとモザイク病の葉かと 失えば時間は大事
気がつけぱのっぺらぼうの今日の冬景色 いつのまにか
樹はいつもそんな感じを味わっているのだろうか冬が来ると
はらはらとばさばさと剥がれて落ちる そんな怖い夢を見た
大切に大切に大切に御身大切に 過ぎてゆく夢になるまで
昨日がなく明日がなくて今もない耀く冬の空のオリオン
絵葉書を買って来ました「炎舞」です上村松篁の「白い孔雀」も
シチュエーションは十分暗いせめて心は明るく なるほど
青空と黄金樹林の冬である 線路向こうで昼啼く鶏よ
素裸の木々に電飾施して夜には燈る冬の街路樹 
野火止はまだ秋の色 黄金色の秋 素裸の木と黄金纏う木と
赤手蟹なるほど確かに手が赤い 満月なれば子を産む儀式
別人の可能性ではなく別人 見知らぬ二人分の骨と判明
開戦の日でレノンの命日でそしてどちらも忘れ去られて
水曜日午後零時半睡魔あり 小春日和のカノンとジーグ
書くこともないのに書いている日記 苺の莟ふくらむ小春
曇り日の土曜の午後の天気図にコサックダンスする冬将軍
ガラの言う宝石よりも美しい麺麭一欠けら冬の晩餐
究極のシュールは写実であるというダリの直感的なパンの絵
しんしんと雪降り積もる雪の夜 赤穂浪士の討ち入りの夜
過去ログが速く流れてゆけばよい速(と)く速く流れゆけよ
目前の死が急がせて1200点の作品群が生まれる
鉛筆の素朴ないえ巧緻な一筆描きのクレーの天使
逃げるしかない人生があることを酸漿色の冬の夕暮れ
閂のかかった門の中に降る落葉の中にひきこもる蝦蟇
最近見たニュースの中であの人の言葉がそのまま語られていた
熱っぽくだるい終日 団栗も気づかぬうちに落ちてこの秋
壊れたら壊れたままでそのままで 過ぎゆくものは過ぎゆくままに
沢山の高提灯が先導し三社祭の神輿が帰る
「冬将軍」まだまだ馬に跨れず 準備体操している画面
NHKの天気予報に「冬将軍」来たりて準備体操をする
深まった秋の徴のような雲 黄昏なればこの国の空
ほろ苦きこの蕗、佃煮にしてもどうにも煮詰めきれない短歌
「両親を殺した」  ミステリー終了次第ニュース始まる
退屈な午後は古畑任三郎 再放送であればなおよく
犯人は確かに特定されたがり発信されてゆく点と線
ライブラリー探ってみれば明らかに殺意の動機、受信履歴に
犯人は必ず何かをミスるもの 再現される事件の経過
ほっそりと若い男であったなら女であっても仮装の範疇
切り口がいよいよ鋭利になってゆく立派な喜劇から悲劇まで
甲羅干し甲羅を洗う石亀も 勤労感謝の日の亀の池
牡丹も茄子も兎も猫も豆の花も御舟が描けば御舟の心
混沌と地底にマグマある時も湖の色考えている
レイアウト崩れていって神さまも悪魔も今は眺めるだけで
残虐も非道も全て許される 許されるものとニュースが語る
戦争のニュースが世界を駆け巡る ドラマを映画を封じてみても
アメリカの猟奇映画のような事件 その足元を濡らす滴り
竜巻が三百棟を壊すのも日本のことと思われなかった
アザラシも鯨も日本の川泳ぎ 越前水母が黒潮に入り
そういえば異常発生していたね蝉の脱がら舗道に屋根に
春頃は私たちにも災難が襲っていたよと鶏も来て
白黒になったら殺されないかしらパンダ羨む裏山の熊
広がることの怖さ飽きたらなさどちらもあってどちらでもなく
こんなにも晴れ上がる空 酷いまでではなく普通に綺麗に
東京はまだ暖かい日曜の午後で冬薔薇小さく咲いて
三匹の猫は二匹となり残る木枯らし2号が吹き降ろす朝
遠い遠い星座の絵本に光る星 等間隔に瞬くツリー
すり抜けてゆく風だったこともある何時より生えし木の根、草の根
もう一歩さらに一歩を踏み込めば引き返すことあたわざる闇
とある日の風であったか春の日の夢であったかすれ違う影
一歩歩けばガチャリガチャリ頸木の音か足枷の音か
もし私が麒麟でも土鳩ても烏でもなければ 私は自由であっただろうか
さてさよならをしよう暫く この世のことをうずめにいこう
秋の陽がためらうように翳る空 白鳥がいま海峡越える
華やかな宴の後のシンプルなさびしさにも似て音楽終る
芙蓉から山茶花までの推移みる白く仄かに香る垣根に
鮮やかに紅葉していた花水木まばらとなって冬の散歩道
立錐の余地無く配置されているドミノ倒しのドミノの不安
永遠の憧れとして存在する白い孔雀であった火の鳥
つむじ風お前が這った草原の何を攫って舞い上がる風
虚しさの理由が解れば虚しさの半分くらいは消えるだろうか
雨の日の車道の水を跳ねる音 今日また一人子供が死んだ
死者多き年なり春を待たずまた雪の津軽へ二人で行こう
備長炭入ても跳ねるトルマリン入れても跳ねる金魚警報
「良心」は消えて兵器が登場する最終兵器ライス長官
ある時はただそれだけであることが虚しく思えた日もあったのに
私の私による私のためだけの歌、笹の葉の舟
星月のさししろしめす空の下 黄金の葉の散り敷く季節
さみどりにひかりあふれていつのひかうたのわかれを
後鳥羽院御製に続き 横雲の空の景色を 良経の詞書にも見るを
昨日知る歌の秘密を 藤原定家の横雲の空の歌 先だって家隆の歌
本当のことも書けないでも嘘は書きたくないWEB日記の曖昧の靄
もっこりとふくらむ鴨が水を掻く 冬が来ている野火止用水
オレンジの飛行機雲と星と月 午前六時の東京の空
ファルージャの総攻撃も支持すると小泉純一郎氏は語る
笛を吹く男に貌がないことも見えない 後ろ姿を追えば
私たちがんじがらめにされながら抗う力も奪われながら
胎動も微動もなくて滾る熱 空白域の直下に溜まる
白い月、白い金星、白い心 2004年の日本の秋
日本を戦場にする首相でも或いはだからか支持率上がる
作中の二重構造 作者とか作中主体の着ぐるみの熊
美しい三日月の舟浮かぶ空 木立の影の透ける朝の
変わり果てた姿になって少しずつ土嚢積まれて水の引く村
逆説と皮肉に満ちた一章を読んでいました「アメリカ日和」
アメリカは雲一つなく晴れていて世界は霙、霙降る秋
ひりひりと誰かが告発するのだろう飛蝗が地球を覆う夏の日
そしてその理由はどんなわけがあり或いはなくて切断の首
やがて死はその足元に這うだろう貴方や私のこの足元に
子犬の生よりも軽いという生の相対死観の真実の位置
そうではなくもしも自分の嗤いならその嘲笑に地球は乾く
自分ではなくて他者を詠っているんだね他者の傍観、軽視の中の死
試練につぐ試練につぐ試練につぐ試練 永久被災のパンドラの函
残酷な性剥き出しにして過ぎる 一本の川そこを過ぎゆく
されど川は水嵩を増し抜けゆけりその本来の姿のままに
タイミング悪く語れば非難あれ 土砂災害の土砂の言い分
濁流と呼ばれる水が突き刺さる濁れる川の水底の村
一揺れで覆すのが天然の自然の性質で本来の姿
すぐそこに今手が届くそのそこにあなたの影が角を曲がった
見過ごしているはずがないから見逃してあげているのねあの人らしく
生きていることが淋しく辛い日は賀茂茄子の味噌田楽でも如何
日本ではまず同胞に殺される 愚か者よと切り捨てられる
ブッシュ氏の再選決る夜の月 東の空の黄なる半月
ブッシュ氏の勝利宣言も真近くて生暖かい晩秋である
恐ろしい時代が来るという気がする罅割れている時代の背中
心地よく街を吹く風 天国はこの世にあると風に吹かれて
楽天の夢は叶って平泉黄金郷の夢をまた見る
「証生」は生の証と青年の母の語る日晒された首
言の葉に言霊こもると猶思う身をもって証かす明らかにする
空を飛ぶ鯨を見ない編隊を組んだ雁金部隊も見ない
母さんに似てるねそんな器用さも纏ってゆく髪の流れも
「とてつもない」いったい何が?白鷺のかぼそい脚を包む朝靄
運命を深く真深く受容してひまわりが咲くロシアの土に
映すのはやめて下さい被災者の一人は疲れた明日の私
ふらふらと歩いていたら何故悪い 無防備は悪といつからなりぬ
「待っててね、待っててね」強い強い強い男たちの優しい言葉
諦めてしまえば終わり二歳児が教えた無垢のしなやかな力
情報は二転三転しているが香田証生、生命証して
蜜蜂の目覚めはいつも静かだが時々死んでいることもある
穏やかで何もない日の何もなさ 今朝、山茶花が零れ始めた
憂うつなのは世界中の時計が止まったせいじゃない
海を見る覚城院の一隅に在りし都の花零れ咲く
鞆の浦、福山、鷲羽、仙酔島 流され公卿七人の戯歌
廻船の航路はとだえ常夜燈、港に遺る 三国に鞆に
海上を西に東に往来し 北前船は夢運ぶ船でありしか
殺されて投げ出されている満月の夜選ばれた生贄として
死の狐 満月の夜の血の祝祭 紅海に満つ潮が引くまで
執拗に狙って向ける銃口の先にいったい何があるのか
真実の影に怯えるアメリカが拒み続ける本当の自分
奇跡の終わりを告げて光りが消えてゆく
包む毛布、担架、青いシート、照明灯 生と死がせめぎ合う
人間はこんなこともできるのか暗闇の中光り在る所
生きていた!!落石と土砂の重なる岩の真下で
日本の過疎を襲った大地震 過密を襲う日もカラス啼く
病いの時は病いに任せ死の時は死に任せ。。。出来たらねそれは。
終わりなき旅の始まり良寛の手紙の中の一節思う
新幹線車両トキ325号 ニッポニア・ニッポン乗客ヲマモリシス
全身でその衝撃を受け止めて新幹線「とき」横たわる
震度6強 地震が襲う天心が断層を切る月の引力
幼い日見た映像の大地震 道の亀裂に落ちた人たち
快晴の空の下にも泥土とか裂け目があって見る鰯雲
不確かな月の引力、半月は地球を切断する磁気送る
(遠くまで飛べないだろうか)海深くある日思った<天使の翼>
半月は置き去りになる不確かな記憶のように置き去りになる
何もせず何もできない一生がまだもう少し続くのだろう
アクセスが集中する時アクセスの中心にある一つの言葉
雨傘はもう要りません私の心を隠す傘はないから
最終の戦いの日に雨降れば傘の花咲く雨の球場
傘さして見ている川の泪橋 落葉病葉渦巻き流れ
安曇野の月にかかった暈だとか富士の傘雲を愛した人に
流星のような驟雨の洗礼を受けて降り立つ折笠千秋
大雨か濡れてならない雨なのか傘をさそうよ尾鷲の傘を
吊り革がゆっくり揺れて吊り革の先に透明傘が一本
台風は蜥蜴という名と知りました昨日伊波さんの日記で
枇杷の木にケサランバサラン晴れた日の富士に笠雲 優しさは嘘
暗闇に燈るランプと月の暈 水晶宮に降る秋の雨
落葉あり おまえが散って明かるくなる 木々の根方にただ降りしずめ
いっそもう蛙にでもなっておしまい いっそもうこの世の果てへ行っておしまい
どこでもないどこか誰もいないどこか 魂だけで生きられたなら
白孔雀の子育てこそは忙しい尾羽の端にも気を遣わねば
レミングを追って飛びます白ふくろう雛は洞で餌を待ってます
目も開かない郭公の子が駒鳥の卵を落とす駒鳥の巣で
白鳥は嘴汚し胸汚し大飛行する旅に備える
群れをなす白鳥がいて湖は月光に濡れ狭霧に濡れる
湖では泳ぐばかりではありません速さを合わせ滑走もする
浮き巣には子どもが餌を待っているカイツブリには暇も非ず
子育てをするには派手では危険だと雌の野雁は薄い茶羽色
正常で普通であってそれゆえに悪と思えり悪であらんと
されどまた狂気などにも興味はない 綺麗な玩具、夢の白鳥
美しいもの以外には興味がない ノイシュバンシュタイン、冬の白鳥
貝殻の中には夢と後悔と潮騒に似た夜の音楽
千年の血のつながりを疎んじた私の何が反応している
瀬戸大橋渡ってゆけば私の何かが疼く 紫紺の島影
今すごくゆっくりゆっくり揺れている遠い地震があったのだろう
「一期は夢よただ狂え」狂いて死せる宅間守か
悲しみを悲しみとして生きてゆく素直に生きて縊られる鶏
ゆっくりと俯瞰してゆく鳥の眼の視野の外なる彼岸の桜
虚しさもいかがわしさも同義語に思えて来たり動悸する如
目に映ることのいろいろ目にしたままこの絶望の世界の外へ
知ってます?おけらの花が咲いてます万葉植物園の陽だまり
草炎える不知火炎える野分来て神無月の真輝く赤
空中にプールを描く親子にも雨降り続く トタン屋根にも
ワールドカップ、オマーン戦は延々と続いて最前線の
百年間郵便局舎は維持されて無用の長物ゆえ返納す
日暮れはもうそこに来ているミッキーとプルートの時間始まる
さよならを練習すればさよならは永遠となるモニターの零
偶然の一つであれば私たち羅列されたる数字2・4
踏切を渡れば海で階段を上れば駅でその下が川、架橋駅
恐竜の痕跡こそが大切と毟り取られる鳥族の羽根
静岡県石廊崎では67,7m、生温かい風渦巻く東京
いつもは平手で今回は拳で殴る台風22号 
通過中 小さく硬くまとまって 台風22号を見送る
どうしても続きを読む≫が消えませんいったいどうしたらよいのでしょう
おそらくはそこにはいないあの人に 二度と逢えない胡弓の楽に
今日までの晴天となる空にして下弦の月のかかる中空
何事もなく過ぎたわけじゃない何事もない毎日を望んだ狐
細心の注意を払って生きない昨日生まれた月の繊さで
曇り空また台風が発生し南洋上蛇行しながら
雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨 甍に軒に私に降る
飢餓線上這ってゆく虫一列になって冬へと向かって歩く
ゆっくりとレールは別れ海に入る 船は入り江に生簀を運ぶ
気がつけばもう十月で閉じられた頁のように私がいる
人は死ぬ必ず死ぬと教えられ 姫神、森の中にて死せり
透明な青の世界に秋の月 星も瞬く夜明けであった
台風が縦断してゆく列島の無月の空によしなしごとを
私の歌ならいつでもどこにでも自由に転載してくださいな
「転載を禁じます」って紹介をしたいと思ったページの隅に
朱の回廊、水の回廊 海に浮き水鳥のごと羽を広げて
琵琶法師哀れを語る厳島 社殿冠水して神無月
雨でした雨のさなかの夕ぐれを赤いバイクが角を曲がって
時々は青空もみえた曇り空 次第に雲が厚くなってゆく
火の山河、水の山河を渡りつつ ニッポニア・ニッポン滅びてゆくも
ありがちな脚本だけど伝説の曲が流れて涼しいラスト
存在という不可思議の芒野を流れる川の岸辺の家族
幾度目の拒否を経験するマウス悲しみらしき青の点滅
いつだって置き去りになる石ならばいっそ知らせよ石塊の重さ
回廊を御柱を打つ波があり寄せくるときも青き潮騒
秋は好き秋に生まれた人といる彼岸の風のように儚く
鬱熱が潜熱となり気化熱となりゆくまでに滴る通草(あけび)
アクチュアリティとリアリティは違うと養老孟司氏がTV画面の中にて語る
黙示録の頁を捲る風があり今ほろほろと崩れゆく塔
海(かい)という名前の猫の本を読む海と子猫の海辺の日記
小紫、紫式部の園芸種  野火止の水ゆるやかな秋
沈黙に似つかわしくない夜だから昔話をしてみたばかり
砂を吐く浅蜊のように砂を吐く もっと美味しく食べてください
彼岸花咲く野火止の土手にして子猫の生まれた秋の日である
棚田には棚田の景色見えながら遠い夕やけ雲も映すよ
川底に無数の卵産み落とし黄金の鯉流れてゆけり
少しずつ時間を錯覚してゆくよ五分遅れの時計のように
主語の無い世界に生きていますから雲と霞と消える煙硝
大阪と福岡拘置所に於いて死刑執行同日二人
花は葉を葉は花を恋う彼岸花 泥色の稚魚泳ぐ野火止
十五歳少年の行く遍路道 雨の宇和島を過ぎて讃岐へ
いつだって置き去りになる石ならばいっそ知らせよ石塊(いしくれ)の重さ
三百人を越える遺体が横たわりと簡単に告げてニュース始まる
幾度目の拒否を経験するマウス悲しみらしき青の点滅
曼珠沙華夕べの道に灯るのは 赤々と咲き赤々と死す
さよならと手を振っていた母だった永遠の別れになると知ってた
「思川」という川の橋 その橋が投下地点と特定される
追いつめて追いつめられて草の原 放り出された二つの心
荒れた野の向こうに木立 木立の向こうに青空がある
丸亀に多度津に京極、宇和島に伊達 都に遠き流離の心
いずれわれら婆裟羅の裔の萩、桔梗 吹く風に萎え降る雨に散れ
海沿いの町が故郷 萩、すすき、彼岸花咲く丹尾の城跡
列島に猛烈な風吹き付けて増幅された何かも襲う
津波来るという警報に醒まされる逆流をする川を見た人
偶蹄目、牛科ミミナガヤギのこと母の命日だったあの日の
1996年10月24日、神戸王子動物園で一頭のミミナガヤギが生まれた
堪えかねて噴く火の色の美しさ千年神の水を湛えて
栗に似て栗より大きい滑らかな殻と木の実が落ちていました
満ち潮は高潮となり風孕み月が引きゆく海の高鳴り
マラトンの丘駆け抜ける選手団 希臘の青の澄みゆく時間
醗酵を待つ詩やパン種や葡萄樽  驟雨の後に光る雨粒
失って滅びていつか消えてゆくそれでも人は夢見るさくら
始まりも終わりも知らず生きていた知らないことが強さであった
火祭りの写真をどうもありがとう篝火はまだ燃えていますか
せせらぎの音聴きながら歩く道 木下闇をゆく水の音
紫蘇、茗荷、山葵、シシトウ、生姜など夏の終りの薄闇の胃腑
曇り日が好きな黄金色の鯉 橋のたもとの澱みの中の
九月になったら私は何をするだろう九月になればチェホフを読むよ
みんみんがつくつくぼうしが鳴き交わす晩夏になれば晩夏の心
やがて死がそこにひっそり掛けるから古い木椅子は木洩れ日の中
直下型地震に揺れるこの夜半東京湾に何が目覚めて
明日はまた東京は暑くなる 石垣島は暴風雨という
甍連なって向こうに白い山がある
投げ銭で決めてください歌集の値段
おとなしい羊のように群れてゆく 牧羊犬のようなパネラ 
教室はやはり教室どこまでも 机並べて短歌を習う
立秋も過ぎて八月十三日 残暑お見舞い申し上げます
まどろんでめざめる朝の白い蜜 季節はずれの鶯の声
向日葵の種と蜜蜂 太陽に背いて墜ちた日々の贖い
頼るものないとき頼る言の葉と今宵生まれた繊い三日月
約束の海の歌です遠い日の記憶のように光る海です
雨の日は飴細工師の小父さんも兎も犬も鳩もお休み
炎える樹は炎える火柱、火柱の尖端にして炎の骸
光る魚一網打尽にする網が見つからなくて月光遊魚
戦争は間違いだった間違いで滅んだ国の亡霊の夏
空白の時が流れて七月の海に浮かんだ島影一つ
アボカドもキゥイも伸びて七月の朝は紫紺の花も開いて
ネアンデル渓谷 遺伝子のネアンデルタール人の故郷
限りなくレイアウト崩れゆき私の歌は消えてしまった
鶏の頸締め付けているあの声だ高音で歌うのは疲れるだろう
夏空の乳白色の雲の舟ローラースケートしているピエロ
どれ程の取引をして日本はこの決定を得たのでしょうか
雷雲は遠くへ去って行きました あの大雨は嘘のようです
天邪鬼踏み据えられても逆らって逆らう程に怒りに触れる
ブログ一つ消えて半身不随に似て 水栽培のアボカド林
極端と極端会えば一点に還元されるヤコブの原理
富士に雪、新潟三条には豪雨そして梅雨明け今日の東京
七月の金魚が水に眠る午後 水はさゆらぐ光りの窓辺
天からは一瞬止んだだけの雨 日本の行方まだ雨の中
ボトルには甘いジュースと毒薬が沈殿物の透明の澱
ペテン師のペテンの語源は知らないが逃げ水という夏の陽炎
無理解は悪。 『沖縄ノ骨』の作者がそう語る 珊瑚の白い骨と混じって
大切な一日のため雨よ降れ しずかにひらいてゆく雨の薔薇
アリゲーターブルーアリゲーター深夜に奔る風を見つけた
生き残る人ゆえ覚悟の足りなさを責められている鬱熱の森
愚かしいことと思えてやめました二足歩行に戻る人鳥類
戦闘色消えたらしくて野を奔る王蟲の赤も一夜にて消ゆ
少しずつ気道を確保するようにゆっくり と夜の帳は下りぬ
呟きはここに変換できない何かに 誰かが泣いているとしても
眠くなる 最後は眠くなって死ぬのだろうか 鳥たちも
仰ぎ見る文月の空の流れ星 戦場に人は撃たれていたり
雷雲にまけてはいない入道雲 青い薔薇咲く2oo4’夏
川底にいても蛍は光るという 弟の手から姉へと蛍
拒否よりも手をさしのべてみる勇気 蔓性植物であろう何かも
天空を走る列車に名づけよう 薔薇星雲を横切る列車
山椒魚、山椒魚って可愛いね 石を枕にうたたねの夢
花が咲き実が生り花は花疲れ 曇り空から白い太陽
多分もう私はこれでお終いと紫陽花の青、紫陽花の雨
夏空に雲一つなき桜桃忌 台風はまだ東シナ海
O音の優雅さ雨の桜桃忌、鴎外忌にも驟雨来て去れ
約束の虹がどこかに立つという探査衛星カッシーニの旅
青い薔薇が咲きカッシーニが土星に着いても退屈がどうなるわけでもない
拒否反応たしかにあった気がしますパドックにいた葦毛の場合
春日井建、享年六十五歳の訃 一人の定家黄泉へ発つ夕
白皙の詩人は一人旅立ちぬ皐月の空に発つ白い鳥
桜桃忌すぎて三日の夕ぐれは哀しきものの見ゆる夕ぐれ
少しずつ眠るためまた生きるため真夏の夢の浅瀬を渡る
退屈の病に私は侵される 病であるから治るのだろう
「死に至る病」ではない憂鬱というのでもない 雨の気配か
雨のない六月だった台風が壊していった日除けを替える
誰かが歌い始めても夜は明けないかもしれないが
桜桃忌すぎて三日の夕ぐれは哀しきものの見ゆる夕ぐれ
さみしくて嵐が去った空を見る遠い山野に棲む獣たち
無意味でも無傷であった頃の城 海辺の町の夏越の祭り
眠ろうとしても何だか眠れない普通に戦争している時代
なんとなく批判をされているような夏来て白い太陽の
水無月の鬱をかかえて紫陽花の半球すでに黄昏れてゆく
一匹の鼠が町を走り出し真昼の雲が白く輝く
もう涼しい風が吹いていてこの世は極楽かもしれません
故郷は遠きにありてというドラマ見つつ琴弾浜の夕陽を
暮れ残る琴弾浜の銭型の寛永通宝、砂に描く文字
紫陽花が雨を知らせる朝顔はもう蔓を巻きつけている
ある夏のかき氷こそ命にて他には何も食べられなかった
夕暮れに風が通れば振り向けばあなたの背中見えた気がする
アナトール・サルバトーレの弦の音聴きつつ震えている夏の翅
鳴沢のジラゴンノなる溶岩の台地を覆う木と草に雨
水色の海と空とのあわいから聴こえる音をタクトにのせて
タイという優しい国で灰になる二人の夢に降る花の雨
隙間から一瞬見えた愛に似たものが欲しくて殺してしまう
心肺に貝殻虫が棲みついて殺してしまう少女がひとり
誰にでもある空洞に鳥を飼う 傷を負ってる鳥の目の青
鳥籠に鳥を飼ったら青空の果てを見せてはいけないという
地の底につづく階段下りてゆく 黄泉とは蛆の湧く土の底
窒息をするより前に死んでいた 狭い隙間も埋められていた
購い替えを待っていたって冷凍庫 解凍されてゆく時間たち
新鮮な生みたて卵のような黄の花芯もゆれて梔子の朝
後ずさりしながら戻る峠道 猪も熊も出る胡桃沢
家事をして運動をしてよく眠るさよなら私の夢を喰う獏
水無月の雨降る雨は心にもこの素晴しい世界の片隅
蜜蜂は蜜を集めて蜜の味 羽化する時は温かくなる
南風吹く東京の日暮どき 檸檬のような月も浮かんで
ダービーを制したキングカメハメハ 府中の空に浮かぶ半月
まだ熱が引かないけれどそのせいで見えるのかしら歪んだ檸檬
名も忘れ一人の男が虎になる中島敦の小説思う
感覚の教会に鳴る釣鐘や天井画など五月の空に
水色の尾長が飛んで上水に夏来る 夏の涼しさの青
ゴミからもアートは作れ工房の中鎮座するプラスティック蛙
熱が出る前の症状 動悸して片腕片肺酸っぱくなって
羊水の中から始る絵日記のような万智さんの「プーさんの鼻」
戦争が始る時と終る時 雨は烈しく降るゆえ儚
サッチモの声が聴こえたサッチモは「この素晴しい世界」と歌う
紫陽花の青の花火のひらく朝 小さく青く雨の紫陽花
何もかも重くなってる何もかも そう何もかも何もかも重い
突然にカミキリムシが這い出して紙切るという噛み切る勿れ
あきらかに社会的適合欠いている天道虫は星で分けられ
関わりもなく生きている淋しさに 美しいもの峠を行くも
石塊の僅かばかりの土にさえ咲く紫の花のひとひら
ここに咲く花の苞衣の中に充ち花の力となる何ものか
霧流れ霧が育てる茶葉がある霧が豊かに育んだお茶
こんなにも暑い日なのにあのひとは痩せた分だけ寒いと言って
スカーフを帽子代わりに巻いてゆくと締め付けられる痛さがないと
猫さへも何かを感じていなくなり庭先はもう二匹の広場
イラクでは毎日人が死んでいて殺害報告にも慣れる長官
基本的に安否の確認などできず仰せのままに頷くばかり
横雲の漂う空はパリの空 NHKの中継で見る
夕暮れの水の流れに沿ってゆく水の流れに運ばれてゆく
脱落と脱出の違い知らぬままこの世の淵をさまよっている
春の野の逃げ水、昼下がりの驟雨 夏には夏の烈しさに降る
日曜の小川に沿った道でした 鴨も小鷺も帰った夏の
香枦園、海と川との汽水には渦巻くものが見えて夏の日
川沿いに歩いて下る散歩道 美術館までゆっくり歩く
あの人はどうしているかと訊かれても訊かれなくても寂しい明日
ポルトガルの洗濯女という風情 曇りのち晴れの空が青くて
泥川に川魚かしら鯰かしら一瞬ゆれて再び沈む
木々の影、魚の影も見えている 湖の岸近くの葦原
葦の葉をのぼる天道虫のこと 蜘蛛の巣作り見ていたことも
川鵜来て鳥の楽園伝説の円形の縛、縮めてゆきぬ
遠く去る鳥には鳥の歌があり水没樹林に降る雨がある
飛ぶ蝶の無数無声の映像の夕映えてゆく金の鱗粉
鱗翅目、蝶や蛾にある鱗粉の身を守るため赦される毒
六月のドナウデルタの葦原の水と光りと小さな魚影
ペリカンが上昇気流に乗って飛ぶ 桃色ペリカン灰色ペリカン
やがて陽はシュヴァルツヴァルトの森蔭に蒼い馬棲むその森蔭に
今日の気分には今日の歌 他にはどうしようもなくて
断片は断片として断片の断片でしかない夢を夢見る
墨色の壷の一に銀彩は隠れてしまう芒の穂波
台風が近づいて雨、終日の雨に降られて空木の白が
遠くから「暫」の声 暫くと声をかけたるものの見えなさ
映像と詩も夢をみる 異次元の入り口に咲く一本の薔薇
本能寺の変よりときは今にして田楽刺しになる心地する
蒸し暑い夜には理科と算数を午前3時の3chで
攻撃の背後にあった八割の支持を充たした奇妙な果実
せっかくの自由も空しくなるわけを少年の目は見ていただろう
金銭に代えられないというけれど金銭のこと量り難しも
計算し演出し演じてみせヒトラーがヒトラーになる一つの過程
今日は雨 雨の中にいる幸福を感じているか葉裏の蝸牛
日の国は火の国、赤く篝火が炎えて 望月に矢も放たれて
地下深く深く堆積滞留し核を守っているマントルよ
温泉は蔵王の含鉄釜の湯の湯の花の咲く蓬生のお湯
汚れなくイノセントであるということの 初夏の空の
春蝉が啼いていました新緑の萌える林の一本の幹
春蝉が啼く季、遠い日の夕べまどろむように沈む太陽
なんとなく残骸めいた掲示板 桔梗咲く頃削除しましょう
黄金色の麦藁帽子出荷する小さな町の小さな港
鮮やかな血の色に染まる基督のメル・ギブソンの映画も完成
私には見られないけれど意味はあるそのリアルには必要性が
退屈という名の病い果てもなく水没樹林の画像見ている
ある人は父をある人は母を亡くして母の日の雨
今日の日が無事に過ぎたということの続きに咲いて深山苧環
「右ゑちご左やまみち」道標の紫に猶暮れ惑う道
塩倉に釘は使わず 塩運び塩を守って千国街道
茗荷竹、茗荷の茎のすくすくと育って茗荷畑の茗荷
茗荷竹、アケビ、筍、ハバの蕗、木苺熟れて夏の五箇山
鋳型にて涅槃の釈迦はとられけり入道雲が見ている真昼
古典的に日輪一つ落ちてゆき薄桃色の夕空となる
大相撲夏場所がもう始ると 水面に光りさす隅田川
非表示の選択あれば埋もれ木の埋もれるままに朽ちゆくもあれ
フェルディナンド・フォン・ツェッペリン伯爵の飛行船 その中空の船
虚しさのかぎりもなくて赤い月 明け方に見る皆既月食
花水木はらはら散れば花筏 一期一会としたためよ歌
言の葉の繁りて散りて五月雨 メイストームの過ぎてしばらく
猫だって家出もするさ家出した猫が子猫を連れて帰るよ
屋根裏に蛇の脱殻、雀の巣 鼬も出入りした穴の跡
憂鬱に似た感情の夕まぐれ 気まぐれ気まま我儘の果て
川原にも陽が射し石に蜆蝶 ナンジャモンジャの花咲いて夏
東北に行ってみたいと思います角館とか太宰の金木
夏の日に剪定鋏光らせて花咲く花の咲かせ方など
いずこにか鋸菊が育つからもう枯れ始めているベンジャミン
花壇にも教育主事は入り来たりタチツボスミレの谷の群落
雨の日の竜巻、晴れのつむじ風 何の尻尾か見えて夕暮れ
誰だって海を釣り上げることは出来ない 海につむじ風
蚕豆が弾けて夏はもう間近 遠くでゆれている青い麦
やわらかく弦の音から始って木管楽器が続くその後
マーラーの『復活』を聴く演奏はルツェルン祝祭管弦楽団
流木が打ち寄せられて来るように悲しい心の切片もまた
妖艶な鐘馗空木の花が咲き 上水の夏始るらしき
いつまでも若く美しくあらねばならぬと『火の鳥』の婆
ファルージャは萌黄色に見える萌黄色の中の桃色の炎
まだ青い小さい苺が二つ三つ四月下旬の涼しい朝
眠くってだるくて疲れてしんどくてそんな日ばかりの春ではあった
海辺には打ち上げれた海草が遥かな時を伝えています
シマウマの後姿を見ています夕陽に向かって歩くシマウマ
象がいてキリンがいて河馬がいて縞馬がいる 地球楽園伝説を継ぐ
金太郎飴よく見ればみな違う顔 それぞれに泣きそれぞれに笑う
春が逝く四月が終る蜜蜂の羽音が聴こえ蝶も生まれる
薔薇も咲き守宮も硝子戸を這って迷宮の森ひらくこの朝
竜川と書いてリョンチョン爆風に吹飛ばされた国境の町
前近代ぬっと顔出す春の闇 火山性ガス噴き出す気配
それぞれの中の戦争も終るから静かに頁閉じられてゆく
大方は主義や主張にあらずして多分表情筋の迷走
列島を寒波が襲う四月尽 春夜の夢に帰り紛れて
イラクへはもう戻れないとアナン氏が 紅砂の海に埋まる部隊
こんなにも殺風景になったわけ 紙風船のような黄のチューリップ
国境の駅のある町壊滅する黒い地蜂が群れて飛ぶ朝
すでにあるものなぞっているだけの危機という名の安逸の胡麻
ニューサマーオレンジ、小夏、日向夏 柑橘系の夏が来ている
宿題を残したままの20日間 風邪後遺症だるさがとれず
黄の花が終れば次は白い花 小さな虫喰いだらけの絵本
雨上がる林の道の腐葉土の中のドングリ芽を出す朝
漆黒の腐葉土ありて金色の朝陽の中の辛夷、木蓮
松毬や泰山木の実の集り 命果ててもなお生きるもの
「自爆する男」画面の金の花 田島征三、木の実のアート
地に落ちたヤシャブシ伊豆の海岸の岩に置かれて花咲く木の実
椿咲く、椿の赤や白の花 渚の水を水盤として
木の実って生命力の塊でゆえに滅びて後もつよくて
今朝落ちた木の実のうすいやわらかい明日花咲くばかりの花胞
海辺には打ち上げれた海草が遥かな時を伝えています
知らされなければ知らないで今日の一日の画面の向こう
なま物の命を運ぶ春の月 花水木咲き躑躅も咲いて
突然に夏来るように最後の日 難読氏名の話題の続き
魂には晩年 亦来る春の終る日の風もない日に散るリラの花
でそれから誰が報道するのだろうそこに虐殺ある日の朝
「揺るがない」大統領と風の墓地 遺体七百埋まるファルージャ
花水木が咲きポピーが咲いているこの夕暮れの濁りゆく空
湿気のない爽やかな日で見残した桜も咲いて今日の一日
夕焼に染まって緋色の鳥となる熱帯雨林の鳥かと思う
ほの甘き千枚漬けの千枚の襞に隠れている赤唐辛子
長さんも弥七も逝って東京に四月の雪を降らせていって
これが春これが四月の気温差か雨が上がれば欅の若葉
折鶴蘭、ムラサキシキブ遅れ咲く薔薇の一輪雨の日の雨
恐ろしい真実は唇が閉じたがって言えない 春浅く黄泉をゆく舟
木苺と射干の花咲く裏道の水のほとりの羊歯にも降る雨
朧月、卯月の空の月の暈 さくら花びら散りゆく刹那
花ぴらはもう葉桜のやまざくら透ける翠の白い花びら
孔雀はもう羽根をたたんだ月光の銀青色の夜が来る前に
街空に煙たなびき消えゆけり卯月の木の芽さみどりの苗
桜散る空掘川の河川敷 渡り鳥来て今年の春も
川霧がたちこめていたのは冬の頃あの頃すでに鷺は来ていた
雨の中咲いて仄かに匂う花 深夜零時に雨雲は去り
紫木蓮、白木蓮が並び立つ白木蓮から零れて落ちる
満開の桜が空に吸われてゆき吹雪となって散る地蔵堂
風もなくお花見日和 今頃はアークも桜祭りの頃か
晴れた朝詩人の誰がいなくてもさくらさくらと声低き歌
花が咲く季節は花を雪の舞う季節は雪を月は見ている
晴れた空が青かったから思い出す空の色
川縁に桜が咲いて待っている春の終りの雨が降るのを
夜になって雨 雨のなか走り去る時曳く雨の音
バイパスを作ったというバイパスの管を通ってゆく舟がある
白湯で服む薬のいくつほんとうの薬であるのか毒であるのか
木蓮が茶色くなって枯れている春に三日の命もなくて
明日はまた雨降るという三月の雪に変わってゆく夜の雨
モビールのイルカが泳ぐモビールを動かす春の風があるから
存在を主張している背表紙に別れを告げて今日の花びら
アルヤバン日本も次に標的にしているというニュースの一文
木蓮、辛夷、桜の莟 のんびりとした春の水曜
東讃の屋島、西讃の観音寺おなじ四国のサヌカイト哉
日本はテロと戦うということで警備の警官多数見かける
混迷を深めているねバグダッド レジスタンスは激しさを増し
なるようにしかならないのだし運なんだしって言って顰蹙を買う
ある時は死にかけていた琉金も春を迎えた奇跡のようだ
爛漫の春よ驕りの春であるよ昨日縊れた鳥もいた真昼
賑わいの市に背を向け山麓の道の傾斜をゆっくり上ると
山麓の南病棟、陽が当たり月も仄かに射してよいと言う
満月は一昨日だったそういえば花のもとにて春死ぬ烏
ぴったりと風がやんだね夕凪の夢のまどろみにも似たやすらかさ
水際に風が流れて風がやむ海岸線に河口にカモメ
洋燈に照らされている雪の日の硝子工房、運河のほとり
混乱は全て収束する形 終息までは言えない形
千年を眠るためには千年を眠れる言葉が必要であり
中和する形としての一章を今からそこに書き加えます
忘れているわけではないが忘れている他人事だった私にとって
朴の葉に餅を包んで藁蘂でとじて村の社の天狗にしんじょ
簡単にあなたも私も殺すだろう虐殺列島住人なれば
鳥、卵、山積みになり棄てられて 殺して埋めてヒト科のヒトは 
群像の絡んだ腕と腕と腕 乳白色の丸い眼球
アポロンが追いかける時ダフネーの指が木の葉に変わるその時
熊の仔は走る熊の親も走る 阿寒の冬は終ったらしい
砂漠には優美なピューマ 一億二千万年前の猫
雪の予報覆ってさて晴れのち雪のち大夕焼けの西空
菜の花の芥子和えとかこの季節食べたくなって程よき季節
満開の梅が誘って国立の谷保天神の座牛に逢いに
午前三時 宙に無数の水の星 水汲み上げる滑車の音も
雛の夜 火星に水とオポチュニティー 時の甘露を白酒として
火星には確かに水があったという 地球に残る水の儚さ
小雪舞う東京の春、今日もまた鷺は冷たい小川に立って
いつのまにか中継は終っていた醒めない夢の中にまだいる
朝のうち小雨ゆっくりと天気は回復すると言っていたのに
テロップが流れるだけの死であってホーゼンフェルトの最後を思う
宗鑑が庵を結ぶ一夜庵 室町幕府とゆかりの土地に
港から夕陽が見える金色の海に続いてゆく道がある
アーケード撤去されゆく柳町 財田川にも鷺が来ている
木蓮がそして辛夷が咲くだろう 春ですあなたは死んではいけない
三月は優しい季節しゃんしゃんと鈴を鳴らして神社の仔馬
午前四時の幼児番組ゆっくりと精霊たちの揺らすぶらんこ
月と星、離れ離れに西の空 軒に届くと思うばかりに
物思うキカイであれば物思う抒情というは何処のキカイ
月と星、離れ離れに西の空 軒に届くと思うばかりに
まだ吹雪く空と天気図示す人 冬の最後の抵抗という
北西の風つよく吹き東北はまだ氷点下の日もめぐるらし
エメラルド・グリーンの果肉切り分けて春の空虚も切り分けてゆく
カリフラワー、キャベツの仲間ではあるが脳葉に似て春の虚しさ
霜焼けを起こした紫ブロッコリー 花の蕾を食べられてしまう
殆どもう破滅を待っているような紫ブロッコリーのような夕闇
そしてまたモスクワ時間を生きていて午後は一様に退屈である
冬川を水が流れて水が去る 猫柳もう芽吹いていよう
安部英あなたが無罪であるならば老いゆく時間も大切である
一人でいい一人がいいと春の月 いつしか水に還った海月
大量に打ち寄せるのは満月の死骸あるいは越前海月
変わらない日常があり変わらない人がいるのに溺死する月
物思うキカイであれば物思う 抒情というは何処のキカイ
潰れてはいなくて、でもどこにも見当たらない そういう存在なのかもしれない
みんなが行くという方には多分行かない 数が多すぎる
書くこともない 七七を付け足し埋めている空白
安静に 動けない人にはどうか別のsuggestionを
文体の句切れ或いは句切れ無し 章句、文節、韻律の鷹 
もう終りだという声がする雲は春 私は私でなくなっている
野火止の鴨の平穏確かめて小さな橋のたもとを通る
その他に何もなかった 毎日は機銃掃射がただ無いだけの
曇り日の空は悲しい夜までも星もまばらで小さな星で
湖の岸を周れば湖の向こうで見えた星も見えない
鬱蒼と茂る森には白梟 煌く星を隠した森の
春の日が菜の花飾る鶏舎にも。真珠のひかり宿す春の日
薄闇に包まれながら目覚めたら昨日か今日か解らなくなる
だんだんと機嫌が悪くなるような春一番が砂塵を上げて
桃色の舌もつ貝がちろちろと覗っている町屋の厨
スクレイピー、プリオン、ヤコブ、海綿が吸い取るだろうメタル・スポンジ
伝統は確かに生きて生きのびてスポンジ脳に点る春の灯
街空に煙たなびき消えゆけり吉野屋さんの牛丼も消え
美しい茨木童子、日々荒みその片腕も綱に落とされ
百円で売られるまでの暫くの歌集が歌集らしくある時
息長く伝え伝える歴史です たった今始まったところです
桶屋にもなれざりしかばビイドロや飴細工師らもなれないだろう
柿の葉の鮨を食べたよ和歌山の海岸走る電車の中で
霜柱踏んでみましたお隣の庭に繋がる草むらに立ち
星の砂掬ってあげる結晶の雪の形の風に鳴る砂
天使には天使の羽が重かった 魚になったその理由です
平和堂、平和公園、平和通り、どこまで続く日本の平和
菱餅は山の旧家の慣わしの雛の節句の無礼講でも
春だから白木蓮の花が咲き天に向かって祈りの形
野原には春がすぐ来る土管とか地面に近い草の葉に来る
筆に似て土筆、杉の子、春の花 菜の花そして大根の花
フィレンツェへ、ベニスへ風の商人は巨万の富を積むフレスコ画
封印は華やかに且つ軽やかに誰も知らない秘密の時間
この舞台、いつかどこかで見たような記憶の島に漕ぎ出す小舟
春までは持たない命だったからさまようのです冬蚊のように
冬田には水凍るから月凍り心も凍る稲田の二月
枕木にする栗の木は黄金沢の日当たる斜面の栗の木林に
草分けの夫婦漫才の漫才師 市場の外れの二階の夫婦
岬から入り江をめぐる道に咲くハマユウゆれて夏は来るらし
名誉ある撤退という選択肢すでに焼かれて砂漠の戦争
紋付の紋は九曜の日月の七曜越えた二つは死星
八百屋にはタラの芽、蕨、フキノトウ 苦味ほろほろ今年の春の
八雲立つ出雲の峰にかかる月 月が出ずれば隠れる獣
黄金の山吹一重八重に咲く山路を行けば山路の黄金
一片の雪の結晶、天上に生まれたままに降る北の国
洋梨のジャムを一壜ヤマモモの壜も一壜、花梨は酒に
浴槽に浮いた花びら桜湯の季節になればさくらの花の
温厚な人が垣間見せる横顔に狂った王の徴、青痣
泥の中きれいな花を咲かせても無意味無意味と蛙が騒ぐ
蜜柑風呂、夏蜜柑の木のある庭の黄金色の蜜柑のお風呂
蒸し器には竹の蒸篭とアルミ製蒸篭があってもちろん竹製
メロンパン大好きだったあの人に持って行こうねお彼岸だから
木綿とか絹ごしだとかお豆腐はやさしい繊維の名前がついて
襟元に飾った釦先輩の第二釦をもらった卒業日
予想ではパドックにいる馬のうち唯一頭だけ抜け出すだろう
何事も無かったことにして終る なお見解を異にする鯊
慈しむ愛というのもあるんだね月に零れる蝋梅の花
鳥、獣、雨の中なる十字路の樟の大樹に降る雨の音
羊歯族の裏白の蔭、無限大 水を湛えて澄む羊歯の森
白金耳焔に焼けばシャーレーの内に今宵の雪降りしきる
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