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短歌工房
バオバブの種
光る風 浜に吹く風 きさらぎの終りとなればボートもあらず
「夏頃に孫が生まれる予定なの」 放射線科に入院の報
生きる希望 死ぬ覚悟をも越えるから 豌豆の芽が今育つから
塔があり教会があり川がある 海へつづいてゆく松並木
エストニア生まれの果実 エストニア土産の絵皿ならここに在り

あの川のほとりに建っている教会 白い小さな教会の塔
舞台にはロシアの雪が降っていて 架空の雪といえどロシアの
何事にも既に動かされなくなっている 連翹の一枝に咲く花
面接は終りましたか新卒の求人広告すでにしてゴミ
どんよりと緞帳下りるそのように雪の匂いをさせて曇り日

空白の時が待ちうけ空虚より他には風も通らない道
ここよりさき何も無いっていうときに 海か山かへ分け入って人
前へ前へ進んでゆけばいつかしら進めまない時に直面もする
金色のあるいは青い透明な海に向かって桟橋に立つ
共感はできないまでも理解ならできると言って理解の限界

「希望、血潮、トゥーランドット」 カラフ王子の答えた言葉
治郎氏が次郎氏、となる一行に春の斑の雪の足跡
潮満ちてくるらし春の魚のぼる汽水域あり春の河あり
水仙の花が咲いたら春だよと尾浦へ抜ける崖で老人
午後からは雨降るというその通り春らしくもない冷たい雨が

鳥籠にあなたは眠り鳥籠にあなたは目覚め 鳥籠の時間
天空を羽ばたくような双頭の鷲が統べていたロシアの大地
ニコライの治世の終わる頃出でて帰ることなき懐中時計
ヒロインのアンナの胸に吹く吹雪 『欲望という名の電車』へとつながる
シンプルな舞台美術の真髄を僅かな素材だけで見せている

松井るみ その人の描く色彩と線の繊細さと大胆さ
最後には光の中へ消えてゆく光りとは闇の終点
原作を読んでみたいと思います 家出老人レフ・トルストイ
冒頭に、ラストに雪が、人工の雪降りづづく『アンナ・カレーニナ』
精神を病む人多い春真昼 異形の鬼の立つ交叉点

母親が捕らえられたという続報 以前にもあったね園児の母が
小さな子がまた刺されたというニュース 午前九時過ぎの滋賀県の事件
十分な捜索をされることもなく海底に 多分そのまま海の藻屑に
紅海に沈んだ船のそののちの数百人の行方不明者
この世のこと何事も思うようにはなりませぬ バオバブの種に水遣り
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