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短歌工房
六月の蟹
ターシャにはターシャの時間流れゆき 黄金の明りのきらめく絵本
待つことに喜びがある 小机にスケッチブック開くその人
窓際のゼラニウムにも陽は射してターシャの庭の温室がある
雪の庭 ターシャの庭に花はなく暖炉に燃える薪はぜる音
金魚絵や菖蒲の団扇配られて 紫陽花もまだ咲き誇る頃

薔薇の木も瓦礫に埋まるとナレーション ヒルデスハイムの薔薇の閲歴
重力をもって飛ぶから凧 びゅんびゅんと今風を切る音
暴力は連鎖するという そんなとき攻撃的な競技始まる
この国は集団発狂していると ゴミを漁ってつついてカラス
毎日のように事件は起こるらし 親子が殺しあって梅雨空

小授鶏がチョットコイチョットコイって鳴いている雨が上がった上水の道
月光はなお燦々とふりそそぎ いざなってゆく夜の恒河沙
満天の星空、銀の河の水 天の柄杓を傾けて汲む
流星も蛍も虹もやませみもその山奥の村で見る夏
この夜の果てを旅してゆくような綺麗な軌跡描いて消えて

お隣に板坂さんがおりましていささか先生と言いそうになる
雨の日の雨のモビール透明の青のモビール雨の雫の
チョットコイ、チョットコイって小授鶏が 水色の尾の尾長が雨に
かたつむり、蛙、紫陽花、シャガの花 雨が好きなら私の仲間
熱っぽい今日は一日降る雨のこの密やかさ愛していたり

『さよならをもう一度』をもう一度 イブ・モンタンやイングリッド・バーグマンを
臆測が飛び交う風土 百年も経ってもきっと変わらぬ風土
多分あの勝気な人はそのこともすでに気に入らないのであろう
この頃はエレベーターもシャッターも殺人あるいは殺人未遂を
鉄焼ける匂いがしたよ 火事の夢 殺人事件の報道ばかり

第一の犯罪隠すためにある第二の場合の理由の詳述
中国の映画であって山奥の村をつないでいる道がある
三連の水車が回る川岸に木切れ集めて焚き火する人
このようにして六月の蟹遊ぶ 死者と生者を分かつ水際に
カクレミノ、隠れ隠れて枯れるまで その葉の蔭に瑠璃色の蝶

シュノーケル青蛙という全身が黄色い蛙や梟の話題
寒気団、心に入りくる六月の鬱々として楽しまぬ日の
説明の代りに流れる音楽があればいいのに何もないのだ
左手を息子の肩に置き歩く 木村栄文氏のドキュメント
藁屋根に灯ともる遠景に楡の枯れ枝、早春の雪
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